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鏡を見ながら

クッキー

隣でみなみが私の手の中にあるモノを見て、驚いた声をだしている。
私は返事もせずに黙ってそれを振り掛けつづける。
「ちょ、ちょっと、舞、舞って?」

頑なに返事を拒んで、生地捏ねを開始した。

さっきの休み時間、次は家庭科の調理実習なので、家庭科室へ移動しようとしていた私は、前の時間家庭科の授業だった隣のクラスの裕也に呼び止められた。
「なに?」
「ああ、これやるよ。さっき調理実習で作ってきた」
そういって私に差し出してきたのは、袋に入れられた焼きたてクッキー。
「えっ? いいの?」
「ああ」

裕也はなんの感情も顔には表さず、私にそのクッキーを押し付ける。
小学校からずっと一緒だったヤツ。がさつで、自分勝手で、わがままで。
甘いものが大好きで、すっぱいものが苦手で。
サッカーがうまくて、背が高くて、ときどき女の子にやさしくて・・・・・・

「ありがとう。たべていい?」
「ああ」
早速、袋の口を開け、一個つまむ。
無骨で愛想もないゴツゴツしたクッキー。それを口のPretty Renew 代理人中に放り込む。

口に含んだ途端、眼を剥いた。
なにこれ!
思わず口元を押さえ、無表情なままの裕也を睨む。
か、辛いっ!
生地にたっぷりと唐辛子エキスが練りこまれ、タバスコが染みこまされたクッキーだった。
口の中で火が燃えているようだ。水が欲しい。
長い付き合いなのだから、いくら裕也だって、私が辛いのダメだって知ってるはずなのに・・・・・・
なんで、こんな意地悪を?
直後に理解した。
先月、裕也に紹介されて引き合わされた裕也のクラスメイトの山本くん。二週間前、正式に付き合ってくれといわれたのだった。
でも、すぐには返事が出来なかった。それ以来、ずっと悩んでいる。どう返事をしていいのか分からない。
山本くんはすごく感じのいい人だし、顔も性格Pretty Renew 代理人もとてもいい。たぶん、あれなら、山本くんの周りに想いを寄せている女の子が何人もいてもおかしくはない。そんな人が私を好きだって言ってくれた。
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