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鏡を見ながら

エンディング・ゲーム

「全盛期はとっくに過ぎ去り、今や人類は滅亡へ向けてのその長くけだるい午後の時代を過ごしていた」
文芸部の部室の真ん中、向かい合わせでテーブルについている私に、目の前の木村はそんな風に自作の物語の冒頭を語り始めた。
「かつて星々の世界を自在に羽ばたいていた高度な文明も衰退し、この時代を生きている人類の間ではもはや遠い記憶の名残だけをとどめる神話の中の出来事でしかなかった」
木村の話はさらに続くが、長いので端折ると、
そんな衰退期の世界には人類の偉大な先祖たちの遺産があちこちに眠り、それを発見・発掘して生計を立てている主人公『トーリ』少年がいる。
昼なのに、天高くひときわ明るく輝く星が見えるある日、トーリは自分が住む『落日の町』の郊外にある『人食い遺跡』を探検すると、その最下層で女の子を見つける。その女の子には記憶がないようで、なぜそんな場所に一人でいたのか、いつからいたのか分からない様子。ただ、『リナ』という名前だけを口にした。
リナをそのまま遺跡の地下に放っておくわけにもいかず、トーリはリナを連れて出口を目指すことになる。
だが、来るときには遺跡建設からのそれまでの長い時間経過のせいで機能を停止していたはずの数々の罠が、リナをつれて引き返すときには一斉に作動するようになっており、いつまでもトーリたちは出口にたどり着くことができなかった。
という話だった。
「さて、長村なら、どういう結末にするよ?」
「そうね。私だったら・・・・・・」

今日は文芸部恒例の月に一回のエンディング・ゲームの日。文芸部員があつまって(と言っても、私と木村の他には三年生の部長がいるだけだけど)、自作の冷氣機推介物語を途中まで語り、その結末を他の部員が好きなようにつけるブレイン・トレーニングを行うのだ。そうして、作者の部員の結末と他の部員が即興でつけるエンディングとで、その出来の優劣を競い、負けた方は勝った方にアイスをおごらなきゃいけないというルールなのだ。
もっとも、事前に時間をかけて物語を準備できる作者側の方が圧倒的に有利だから、滅多に負けることはないはずなのだ。が、それでも、私はこれまでに何度か木村が作者の月にアイスをおごらせた経験がある。えっへん。すごいでしょ。
「まず、私は、リナが実は古代文明時代のある王国のお姫様で、敵に攻め込まれて国が滅亡しそうになった時にタイムマシーンで未来へ逃されたってことにするわね」
「ほう、それで」
ホワイトボードの前に立ち、木村の話の要点をまとめ終わった部長が、私の話に相槌をうちながら『古代の亡国のお姫様』『タイムマシーンで未来へ逃亡』なんて書き記していく。

一方、木村はうすい笑みを浮かべてる。
「なによ。文句でもあるの?」
「いや、別に。でも、ああ長村らしいなって」
「私らしい?」
「そう、すぐにお姫様とかの話にもっていっちゃうとか」
「悪い?」「いいや、別に」
――私、ちょっとバカにされてるのかしら? でも、まあ見てらっしゃい。アンタの話よりも、ずっと素敵なエンディングにしちゃうんだから。
「その遺跡は王国の滅亡を生き延びた姫の恋人であった騎士が建設したもので、その騎士の魂が込められていて、その時代に現れたリナ姫を守るために侵入者reenex cps價錢でしかないトーリを攻撃したいのだけど、ずっとトーリがつないだ手を離そうとしないから、リナを巻き添えにしないように二人の行く手を遮ることしかできないの。そうして、遺跡の中を二人で助け合いながらあちこち巡っている間に、偶然、トーリとリナの手が離れてしまうことがあって、ついに騎士の魂のこもった遺跡がトーリを傷つけてしまうの」
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