ワイルドストロベリーも咲くようになると、気がつけば鳥たちのさえずりで空は賑わっている。どこで越冬したのか雀も雲雀も、時にメジロや雉も鳴いている。鶯もたまにお馴染みの独特なホーホケキョ…で耳からも春を知らせ回る。
始終鳴き続ける鳥たち。何をお喋りし合っているのだろう?…やっと外に出られるようになったね。花の蜜も新鮮で、フレッシュな食べ物たちがたーくさん。…寒い冬を頑張って乗り越えてよかったね…。…今年も春はやっぱり素敵だね…。
弾け合うように鳴く鳥たちも、鳴き声だけを聞いているとどこか楽しそう。こんなにたくさんの鳥が、いつも春になると確実に鳴いているのに、冬の居所がどこなのか、本当に不思議だ。皆で体を寄せ合って寒さを凌いでいるのだろうか…?
海辺にはそろそろ満開のエンドウマメの紫があたり一面を覆い、草原を紫色にしてしまう。一斉に咲くエンドウマメの紫色は本当に美しく、何度「綺麗」と言っても足りないぐらいの美しい、不思議であっという間に過ぎ去る光景が瞼に焼き付けられる。
エンドウマメも桜同様、一つの花は本当に小さく、背丈も低いが、群生すると紫色が洪水のように溢れ出る。他の植物に巻き付いて少し高いところからあたりを見渡す花もいれば、地面でしっかりと咲く花もいて、同じ花なのに咲く場所で個性を感じてしまう。…でも、どの花も一生懸命咲いている。短い花期で精一杯咲いている。そんなエンドウマメを見ていると、私は自分が本当に一生懸命生きているのかどうか、考えさせられる。
地面を見やると、蟻たちがせっせと働いている。皆でどこへ向かい、どこから帰ってくるのか…。自分たちの生活を守るために一生懸命働く蟻たち。私は劣等感を懐いてしまう。自分が働けるまでの体に戻っていないからだ。焦りを感じてしまう。
ニセアカシアの林には、白い藤のような花がたくさん咲く。そこを通ると優しく甘い香りが一帯を包み込んでいる。香りが強いので、そこだけがニセアカシアの世界になってしまっているかのよう。花は白に近く色としては目立たないが、その香りは群を抜いている。きっと木が大きくて、花の数も半端ではないからだろう。コロンを撒き散らしたような芳香の煌めきが覆う、甘く優しい一帯…ミツバチが好むのも、よくわかる。
…治妃、浮かない顔をしているね。大丈夫よ、私たちには何もできないけれど、香りを楽しんで行って…。とても
淨膚霜つらく悲しい日も、そうやってニセアカシアは、私を元気づけてくれる。ニセアカシアは花期が長い。花が終わり散ってしまうと、少し寂しい。毎日甘い香りで私の背中を押してくれたニセアカシアの花。でも…花が終わってしまっても、ニセアカシアはニセアカシア。パターンの決まっているニセアカシアの葉の緑を、次は眺めさせてもらうのだ。