ところが日本語でも諺にいたっては、反語的なものがけっこうある。孫にも衣装、馬に念仏、猫に小判がそれだ。
そうやってわけもなく日本語とドイツ語を比べる私は、時間的にいったらおおよそ人生の半分をそれぞれの地で過ごしたことになる。
ドイツに来て初めの二、三ヶ月、習慣の違いに興奮したものだが、まもなく共通点の方が目につくようになった。近隣の国の人ら(スイス、フランス、イタリア、オランダ、ポーランド、ベルギー、ロシア人etc.)と比べても、海の向こうの人ら(イギリス、アメリカ、カナダ、中国etc.)と比べても、日本人とドイツ人はやっぱりどこか似ている。
明治維新後の日本の法律や学校制度、医学なんかがドイツに学んだせいもあるかもしれないがローマ帝国の力のおよぶ土地柄で民族としてのアイデンティティーを二千年探求したドイツも
第二次大戦で負け、68年には学生運動やテロが活発になり、短期間で経済大国になった。
そんな歴史的な背景をリンゴで比べるなら、赤リンゴと青リンゴぐらい似ている。
けど日常の生活では、やはりぜ〜んぜんちゃうやんというのがいくつかある。今日はそれを二、三紹介しよう(長いっすよ。興味のある方だけどうぞ)
いつだったか、日本人留学生が冷や麦を作って御馳走してくれた。実家から美味しい麺を送っ
てくれたのだそうだ。
食べ始めると彼は私の顔を心配そうにのぞきこんで聞いてくる。
「不味い?」
ドイツ化してしまいズルズル吸わない私の食べ方が、えらくもどかしく見えたんだとか。
私はもちろん日本人だから彼がズルズルやっているのも特に気にならなかったし、自分が箸で少しずつ噛み切っては口に運び、とやっている不作法にも気づかずにいた。
日本を訪れるドイツ人が、そうめんやラーメンを強力掃除機のように吸い込みながら食ってる日本人を見ると少なからずカルチャーショックを受けるらしい。
彼らは日本人のことを、飛びきり上品で行儀のいい民族だと思い込んでいるのだから。
私も日本人は行儀のいい民族だと思っているが品にいたっては、そのさだめるところけっこう
お国柄それぞれだったりする。
たとえば日本の言い回しにある、
『爪の垢を煎じる』
というあれだが、うーん、今となっては私でもどうも汚いものを想像してしまう。だって煎じた後でそれ飲むって設定なんだもん!
やだやだ(笑)
ドイツにも実は、同じ意味の言い回しがあり、『eine Scheibe abschneiden』という、
つまり手本になる人から一片(肉を)切り取るというシチュエーションを表現している。で、
その一切れの行く先はやっぱり腹ん中。食って自分の肥やしにするという目的が暗黙のうちに省略されちゃってるのだ。カニバリズムー!!
怖い怖い(笑)
日本の梨と洋梨ほどの違いはあるものの、まあどっちもどっちだ。